支払督促を自分でやってみる(東京簡易裁判所編)
マーケティングとは直接関係はありませんが、「取引先が代金を払ってくれない」という経験をされた方は少なからずいるのではないでしょうか?
少ない金額だと諦めてしまう方もいるかと思いますが、絶対に泣き寝入りしたくない場合、民事訴訟よりも簡単な「支払督促」を利用するという方法があります。
「支払督促って何?」という方は検索していただければと思いますが、ここではもう一歩進んで、「自分で支払督促手続きをやってみる」ための書類の書き方を解説いたします。なおこれは東京簡易裁判所の場合ですので、他の裁判所の場合は直接管轄の裁判所に問い合わせてください(契約書に管轄裁判所の記載があったとしても、支払督促の場合は「債務者の住所地を管轄する簡易裁判所」に申し立てます)。
●必要書類は こちら をご覧ください。
なおこれから先は弊社が作成した「支払督促申立書サンプル.xlsx」を基に説明いたします。なおこのサンプルは自由にご利用ください。
2024年10月1日に郵便料金が改定されます。
この記事に記載の郵便料金は改定前のものですので、改定後の料金は裁判所のWebサイト等でご確認ください。
■ 支払督促申立書
1.●●請求事件
●●の部分に題名を記入します。例えば「貸金」「売掛金」「賃料」「売買代金」「請負代金」などを記載します。
2.申立手続費用
①~⑤には、この支払督促の申し立てにかかる費用を記載します。
①申立手数料(印紙)は、訴額に応じて変わります。手数料一覧表 を参照ください。
②支払督促正本送達費用(郵便切手)は、債務者1人につき1,230円です。無地の角形2号の封筒(A4判の大きさの紙が折らずに入る大きさの封筒)に債務者(相手方)の住所・氏名(法人の場合は法人名と代表者名)を記載し,1,230円分の郵便切手を貼ったものを用意してください。なお法人の場合、債権者・債務者共に代表者名は「代表取締役社長 ●●●●」ではなく、必ず「代表者 代表取締役 ●●●●」と記載してください。
③支払督促発付通知費用は120円です。無地の角形2号の封筒(上記と同じ)に債権者(あなた)の住所・氏名(法人の場合は法人名と代表者名)を記載し,120円分の郵便切手を貼ったものを用意してください(代表者名の記載の仕方は前述の通り)。
④申立書作成及び提出費用は、支払督促の場合は800円と決まっています。
⑤資格証明手数料は、相手・自分が法人の場合に必要となります。各法人につき代表者事項証明書や履歴事項全部証明書などを法務局で取得して添付する必要があるため、その取得費用となります。なお支払督促の申立日から3か月以内に取得したものでないと受け付けてくれません。
また 必要書類 には「郵便はがき(63円) 債務者1名につき1枚ずつ必要です。」と記載されていますが、この葉書代は債務者に請求することができません。支払督促申立書の下の方に葉書の金額を記載する欄があるのですが、なぜか経費には算入できません。この葉書には債権者(あなた)の住所・氏名(法人の場合は法人名と代表者名)を記載してください(代表者名の記載の仕方は前述の通り)。
3.債権者氏名
債権者(あなた)が法人の場合、会社名と役職を記載するのですが、会社名はいいとして、役職の記載は
「代表取締役社長 ●●●●」と記載してはいけません。必ず「代表者 代表取締役 ●●●●」と記載してください。これは債務者に対しても同じです。これを間違えると、全部書き直しをしなければならなくなります。
誤)代表取締役社長 ●●●●
正)代表者 代表取締役 ●●●●
4.価額、貼用印紙、郵便切手、葉書、添付書類
ここでまた各項目に金額を入れなくてはなりません。
価額とは訴額、つまり債務者に対して請求する金額を入れます。
貼用印紙は、前述の①申立手数料と同じです。
郵便切手は前述の②、③の合計額です。②が1,230円、③が120円の場合は、1,350円となります。
葉書は債務者が1名の場合は63円です。
■ 当事者目録
「3.債権者氏名」で前述の通り、役職の記載は必ず「代表者 代表取締役 ●●●●」と記載してください。これは債務者に対しても同じです。
■ 請求の趣旨及び原因
1.遅延損害金
昔の法定利率は年5%でしたが、今は利率は数年ごとに是正していますので、申立を行う際にご確認ください。
2.請求の原因
「契約の内容」と「未払料金」を記載します。
「契約の内容」は元々の契約内容と支払期日等を簡潔に記載してください。また「未払料金」は内訳があるのであればそれも記載します(例:「月●●円×●ヶ月分」)。
なおここでやってはいけないのは、契約書のように自分と相手を「甲」「乙」と記載することです。自分は「債権者」、相手方は「債務者」と記載してください。「甲」「乙」と記載すると、必ず書き直しを要求されます。
これを守るだけで、手続きが格段にスムーズになります。
さいごに
事業を行っていると、支払いに関して必ずといっていいほど未払いのトラブルが発生します。
きちんと製品・サービスを提供しているのであれば正当な対価を得るのは当然のことですが、中にはさまざまな事情でそれが難しい時があります。
もちろん、誠意のある取引先には便宜を図ることが大事ですが、最初から踏み倒す気まんまんの取引先があるのも現実です。できれば避けたいところですが、法的手続きが必要になった時に参考にしていただけますと幸いです。