船の名前にはなぜ「丸」がつくのか?

突然ですが、私は以前から不思議に思っていることがあります。それは、船の名前にはなぜ「丸」がつくのか?ということです。

Webで調べてみると、最初に出てくるのが明和海運株式会社様の「海運豆知識」というページです。以下のような説明がありましたので、抜粋いたします。

  1. 豊臣秀吉が巨船を造って日本丸と名付けたのが起こりである。
  2. 中国の皇帝の時、天から降りて船を造ることを教えた白童丸の丸を採った。
  3. 易経から来た。(排泄を意味する古語の動詞『まる』に由来し、わざと醜悪な名前をつけることで魔物や厄災から逃れることを祈念したため)
  4. 封建時代に屋号を用いた丸から転用された。
  5. 麿から転化した。(自分のことを麿と言ったのが、後に愛敬の意味で人名に付け、さらにそれが広く愛玩物に用いられ、同時に麿から丸に転じ、船にもつけるようになった。)

このうち、1についてはなぜ豊臣秀吉が「丸」とつけたのかが分かりません。また2であれば中国の船にこそ「丸」がついているはずですが、そんなこともありません。また4もいまひとつ説得力がありません。

ここでなんとなく説得力がありそうなのは3と5です。3については、昔は子供が生まれても生存率が今よりもずっと低く、子供を魔物から守るためにわざと醜悪な名前をつけていたそうですので、これはありそうですが、私が一番推しているのは、5の「麿から転化した」です。

※ここから先は、筆者の考えです。もし「それは違うよ」という方がいらっしゃいましたら、「お問い合わせ」よりご連絡ください。

ではなぜ5なのか … それは日本の昔ばなしが関係しています。

日本の昔ばなしには「鬼退治」の話がいくつも出てきますが、なぜか鬼を退治するのは「子供」です。ではなぜ子供が鬼を退治できるのか … それは、古来の考え方が関係しています。

日本では古来、「子供にはとてつもないパワーが秘められている」と考えられていました。確かに子供ってものすごく体力がありますし、小さい体から想像できないほど大きな声が発せられますね。今では教科書に載らなくなってしまいましたが、聖徳太子も「7歳像」や「13歳像」など、子供の頃を形取った像が残されています。鬼という強大な敵と互角に渡り合えるのは、とてつもないパワーを秘めた「子供」なのです。だから桃太郎は鬼退治ができたのです。ちなみにお供の犬・猿・雉は、鬼が出入りする鬼門(艮=うしとら)の反対側にいる「申・酉・戌」に由来すると言われています。

子供の名前には「麻呂 / 麿」から転じた「丸」が使われていました。五条大橋で弁慶と戦ったのは牛若丸ですし、そういえばピュンピュン丸なんてのもあったなあ …(古)。でもライオン丸は大人だったような(笑)。

でもなんで船に子供の名前なのか? … それは、当時の船の安全性が大きく関係しています。今でこそ船は大量の物資を安全に運ぶことができますが、昔は危険な乗り物でもありました。奈良時代に唐から日本にやってきた鑑真和上は5度の渡海に失敗し、6度目にしてようやく日本にたどり着くことができました。

衛星やレーダーを駆使できる現代ですら、時として海は危険な場所です。ましてやそんなものがなかった昔では、海は何が起きても不思議ではなかったでしょう。まさに鬼の世界に突っ込んでいくようなものです。そんな魔の世界に打ち勝ち、航海の安全を祈願するために「子供の名前」をつけたのではないか、私はそう思っています。

なおロボットアニメの主人公に「子供」が多いのは、日本の昔ばなしの影響なんでしょうか?でも昭和30年代のヒーローって、月光仮面とか七色仮面とか、大抵「おじさん」だったんですけどね …(古)。

以上はあくまでも筆者個人の考えです。他の意見や考察がございましたら、お教えいただけますと幸いです。

●追記
「鑑真和上は5度の渡海に失敗し」と書きましたが、実際に出航した後にアクシデントに遭ったのは2度で、残りの3度は船の安全性とは無関係に出航ができなかったそうです。

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Posted by mosaique-inc