「好き嫌い」と「良し悪し」
- 私が広告代理店の営業だった30代の頃、カタログ制作の打ち合わせに出た時の話。クライアントにこんなことを言われました。
「黄色は嫌いだから、使わないで欲しい」
- 遡って、私がメーカーの宣伝担当だった20代の頃、当時の上司にこんなことを言われました。
「君のセンスなんて大したことないんだから、デザイナーに自由に(デザインを)させなさい」
さてあなたはデザイナーに対してどういう指示を出しますか?
私はこう思います。
「好き嫌い」と「良し悪し」は分けて考えよう!
デザイナーにデザインを発注する時、皆さんは何を重視されるでしょうか?
「カッコイイデザインを!」って言われるケースが多いですが、「カッコイイ」の基準は何でしょうか?またカタログが「カッコイイ」ことが、商品の売り上げにつながるのでしょうか?
私はカタログデザインの半分はロジックだと思っています。
ロジックとは、そのカタログの「メインターゲット」を明確にすることであったり、商品を理解してもらうための「ストーリー」を作成し、それに沿った見せ方をすることを指します。
「なんだ、そんなことなら分かってるよ!」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実はこの部分(=ロジック)が打ち合わせ時にきちんと示されることはごく稀です。
カタログとは、ただ色をつけて並べている印刷物ではありません。
カタログの根幹の部分をしっかり決めること … 広告宣伝担当がしなければいけないのは、まさにその部分です。
もちろん、「デザインに一切口を出すな!」と言っている訳ではありません。でもそれはあくまでもデザインの「方向性」であって、「趣味」の話ではありません。
デザインに対してあれこれ注文をつけたがる方は多いです。特に、絵や写真など芸術系の趣味を持った方ほど、ご自身の「センス」に自信をお持ちなのか、その傾向が強いように感じます。
私はよく「合コン」に例えてお話をしますが、あなたが気に入る女の子は他人の好みとは違います。まさに「人の好みは十人十色」です。側から見てあなたの趣味が悪いと思われても、あなたが気に入ればそれが全てです。
デザインも同じ。素人の趣味レベルのセンスなど大したものではありません。
でも、だからデザイナーに依頼するのです。そして依頼する以上、デザイナーに気分良く仕事をしてもらい、発注額以上の成果を上げてもらうことを目指さなくてはなりません。
… そのためにはどうしたら良いでしょうか?
「君のセンスなんて大したことないんだから、デザイナーに自由に(デザインを)させなさい」
私はこう言ってくれた上司を今でも尊敬しています。